マイホームの購入は、多くの方にとって人生で最大の買い物です。
その手続きの中でも特に重要なのが「重要事項説明」です。
しかし実際には、『契約当日に分厚い書類を渡されて「では説明を始めます」と言われ、専門用語が続く中でなんとなく署名してしまった…』そんな経験をする方が少なくありません。
そこで本記事では、重要事項説明の中で特に注意して確認すべきポイントを6つに厳選して解説いたします。
この記事を読めば、重要事項説明を受ける際に気を付けるポイントや、重要事項説明書と並んで特に重要とされている「37条書面」との違いがわかります。
一生に一度の新築住宅の購入で、失敗したくないという方はぜひ最後まで読んで参考にしてください。
重要事項説明書とは?法的な位置づけと目的

重要事項説明は、宅地建物取引業法(宅建業法)第35条に基づく法律上の義務です。
不動産会社(宅建業者)は、売買契約が成立する前に、買主に対して物件の内容や取引条件に関する重要な情報を説明しなければなりません。
これを怠った場合、不動産会社には業務停止や免許取消といった行政処分に加え、刑事罰(2年以下の懲役または300万円以下の罰金)が科される可能性もあります。
重要事項説明は、上記のような重い罰則が適用されるほど、重要な手続きと位置付けられています。
説明できるのは宅建士だけ
重要事項説明は、国家資格である宅地建物取引士(宅建士)の独占業務です。
説明を受ける際には、担当者が宅建士であることを証明する「宅建士証」を必ず提示してもらいましょう。
提示がない場合は遠慮なく求めてください。
また、説明者が「宅建士ではないスタッフ」だった場合は、その時点で手続きを止める権利があります。
IT重説(オンライン重説)にも対応が進んでいる
2021年から売買契約においてもビデオ通話等によるオンラインの重要事項説明(IT重説)が解禁されました。
対面と異なり画面越しの説明になるため、資料の確認がしにくいこともあります。
IT重説の場合は特に、事前に書類のコピーをもらっておき、手元に置いた状態で説明を受けることが大切です。
わからない点はその場で遠慮なく質問しましょう。
重要事項説明書のコピーを事前にもらっておく
重要事項説明を受ける際は、事前に重要事項説明書のコピーをもらっておきましょう。
重要事項説明書には専門用語や難しい単語が多く、説明を一度聞いただけでは内容を理解できない可能性があります。
事前に書類を読み込んでおくことで、的確な質問ができるようにもなります。
結果的に重要事項説明の時間短縮にもつながり、説明時の負担も軽減できるので、重要事項説明書のコピーは事前にもらっておくようにしましょう。
重要事項説明書のチェックポイント【物件編】

重要事項説明書の物件に関する事項のうち、特に重要なポイントを3つに厳選して解説します。
今回解説する項目は以下の3つです。
- 登記登録と物件情報の一致確認
- 用途地域・建蔽率・容積率
- ライフライン(水道・電気・ガス・排水)の整備状況
それぞれ詳しく解説していきます。
① 登記記録と物件情報の一致確認
重要事項説明書には、物件の所在地・地番・面積などが記載されています。
これらが登記記録(謄本)と一致しているかを確認しましょう。
新築住宅の場合でも、売主(販売会社)と建築会社が異なるケースがあります。
土地の登記上の所有者と売主が同一人物・同一法人かどうか、必ずチェックしてください。
一致していない場合はその理由を必ず説明してもらい、納得できなければ署名を保留する判断も必要です。
② 用途地域・建蔽率・容積率
用途地域とは、都市計画法によって定められた土地の使い方のルールです。
たとえば「第一種低層住居専用地域」は閑静な住宅街として保護されており、コンビニや飲食店などの商業施設は原則として建てられません。
一方で「近隣商業地域」に隣接している場合は、将来的に大きなビルが建つ可能性もあります。
建蔽率(敷地面積に対する建物の建築面積の割合)と容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)も重要です。
これらの数値によって、将来的に増改築できる範囲が決まります。
購入後に後悔しないよう、必ず確認しておきましょう。
③ ライフライン(水道・ガス・電気・排水)の整備状況
新築住宅であっても、引渡し時点でライフラインが完全に整備されていないケースがあります。
排水管の引き込み工事が未完了だったり、将来的な整備に費用負担が生じる場合もあるため、工事完了時期や費用負担の有無を確認しておきましょう。
また、整備状況とは別に、ガスの供給形態にも注意が必要です。
資源エネルギー庁の調査によると、都市ガスとプロパンガスでは料金に1.5~2倍程度の差があり、月5,000~8,000円ほどのコスト差になるケースもあります。
契約後に供給形態を変更することは基本的にできないため、事前に必ず確認してください。
(出典:資源エネルギー庁「家庭向けエネルギー価格動向調査」 https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/)
重要事項説明書のチェックポイント【取引編】

続いて、重要事項説明書の取引に関する事項の中で特に重要なポイントを3つ解説します。
取引に関する事項のうち、特に重要な3つは以下の通りです。
- 手付金の保全措置
- ローン特約の内容
- 契約解除・違約金の条件
それぞれの内容をチェックしていきましょう。
④ 手付金の保全措置
新築建売住宅を購入する場合、売主は不動産会社(宅建業者)であることがほとんどです。
この場合、売主が倒産などで物件を引き渡せなくなったとき、支払った手付金が返還されるかどうかが問題になります。
宅建業法では、売主が宅建業者の場合、以下の金額を超える手付金を受領するには「保全措置」を講じることが義務付けられています。
- 未完成物件:売買代金の5%、または1,000万円を超える場合
- 完成物件:売買代金の10%、または1,000万円を超える場合
(出典:宅地建物取引業法 第41条・第41条の2|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176)
保全措置の有無・方法(銀行保証か保険かなど)を重要事項説明書で確認しましょう。
「保全措置なし」と記載されている場合はその理由を確認する必要があります。
手付金の額が高額になるほどリスクが高くなるので、慎重に確認しましょう。
⑤ ローン特約の内容
住宅ローンの審査が通らなかった場合に、契約を白紙解除できる「ローン特約(融資利用の特約)」は、買主にとって非常に重要な保護条項です。
ただし、この特約には金融機関・融資金額・申込期限・解除期限などの条件が細かく設定されています。
特に注意が必要なのは「指定された金融機関以外での審査は対象外」「解除期限を過ぎると手付金が返還されない」といったケースです。
事前に書類のコピーをもらって、条件をよく確認しましょう。
⑥ 契約解除・違約金の条件
買主都合で契約を解除する場合、原則として手付金は没収されます。
一方、売主都合で解除する場合は、受領した手付金の倍額を返還するのが一般的です。
また、引渡し後に解除となった場合は「違約金」が発生します。
違約金は売買代金の20%と設定されているケースが多く、たとえば3,000万円の物件であれば600万円にのぼります。
この金額は重要事項説明書に記載されていますので、「どんな場合にどのくらいの金額が必要になるか」を事前に理解した上で署名しましょう。
重要事項説明書(35条書面)売買契約書(37条書面)との違いにも注意

重要事項説明書(35条書面)と売買契約書(37条書面)は、似ているようで役割がまったく異なる別の書類です。
混同してしまう方が多いので整理しておきます。
| 重要事項説明書(35条書面) | 売買契約書(37条書面) | |
| 役割 | 物件・取引情報を伝える書類 | 当事者間の合意内容を記録する書類 |
| タイミング | 契約前(必須) | 契約締結時 |
| 説明者 | 宅建士(必須) | 宅建士の記名が必要 |
重要事項説明書は「判断するための情報」を提供する書類であり、売買契約書は「合意内容を確定させる書類」です。両方に引渡し日・残代金支払日などが記載されますが、その内容が一致しているかを必ず照合してください。
万が一、重要事項説明書と売買契約書の内容に矛盾がある場合は、署名前に担当者に確認を求めましょう。
「後から直します」という口頭の約束は証拠になりません。書面上の内容が正として扱われます。
まとめ|契約書に署名する前が最後のチャンス

重要事項説明は、住宅購入における「最後の確認の場」です。
署名・捺印をしてしまった後に「知らなかった」「聞いていなかった」という主張は、原則として通りません。
この記事で紹介した6つのチェックポイントを、事前に頭に入れておいてください。
宅建士が考える「危険なサイン」も3つお伝えします。
- 説明が早口で、質問しづらい雰囲気がある
- 事前に書類のコピーをもらえない
- 重要事項説明書の「備考欄」に記載が多い物件(追記事項が多いほど物件に複雑な事情がある可能性)
少しでも気になることがあれば、その場で必ず質問してください。
それでも不安が残る場合は、第三者の宅建士や不動産コンサルタントに確認を依頼することも選択肢の一つです。
高額な買い物だからこそ、納得した上で署名することが何より大切です。
