「親から実家を相続したけれど、誰も住む予定がない…」

「空き家のまま放置するのも不安だけど、売却すると税金がすごく高くなると聞いてためらっている」

このような悩みや疑問をお持ちではありませんか?

実家という大切な資産を手放す際、一番気になるのが「どれくらいのお金が手元に残るのか(つまり、税金がいくら引かれるのか)」ですよね。

この記事では、要件を満たせば売却時の税金を大幅に減らせる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(通称:3,000万円特別控除)」について、宅建士とFP2級資格を持つ筆者がわかりやすく解説します。

2024年(令和6年)の税制改正で「売却しやすくなった」最新の変更点も盛り込んでいますので、ぜひ最後まで読んでみてください!

目次 [ close ]
  1. 実家を売った時の税金が安くなる「3,000万円特別控除」とは?
    1. そもそも不動産売却の税金(譲渡所得税)ってなに?
    2. 特例を使うと、利益から最大3,000万円を差し引ける!
    3. 通常の「マイホームの3,000万円控除」との違い
  2. 実家の売却で3000万円特別控除が使えるか確認!「5つの必須条件(要件)」
    1. ①「昭和56年(1981年)5月31日以前」に建てられた家であること
    2. ②相続の直前まで、亡くなった親(被相続人)が「一人暮らし」をしていたこと
    3. ③相続時から売却時まで、ずっと「空き家」であること
    4. ④「耐震リフォームをして売る」か「更地にして売る」こと
    5. ⑤売却金額が「1億円以下」であること
  3. 【要注意】実家売却で3,000万円特別控除を使う際の落とし穴
    1. 期限は「相続開始から3年を経過する日の属する年」の12月31日まで!
    2. 確定申告が必須!自動的に控除されるわけではない
    3. 相続税の「取得費加算の特例」とは併用できない
  4. 実家の売却で3000万円特別控除を受けるには?必要な書類と手続き
    1. 1. 必要書類を集める(難易度:★☆☆ / 期間:約1〜2週間)
    2. 2. 市区町村で確認書をもらう(難易度:★★☆ / 期間:約1〜2週間)
    3. 3. 税務署で確定申告をする(難易度:★★★ / 期間:約1日)
  5. まとめ:実家の売却は「期限」と「要件」の確認を最優先に!

実家を売った時の税金が安くなる「3,000万円特別控除」とは?

3000万円特別控除の条件

「3000万円特別控除」とは、相続した不動産を売却した際に、利益から最大3000万円控除できる制度のことです。

不動産を売却して利益が出た場合、通常であればその利益に対して高い「譲渡所得税」を納めなければなりません。
しかし、この「3000万円特別控除」が適用されれば、税金の計算の元となる「利益」を大きく減らすことができるため、結果として支払う譲渡所得税が割安になる、あるいはゼロになるケースが多いという、売主にとって非常に強力な制度です。

制度の詳しい仕組みと、似ている制度との違いについて、以下で順番に解説していきますので一緒に確認してみましょう。

そもそも不動産売却の税金(譲渡所得税)ってなに?

不動産を売って「利益(儲け)」が出た場合、その利益に対して税金(譲渡所得税および住民税)がかかります。
この「利益」のことを専門用語で「譲渡所得」と呼びます。

計算式は以下の通りです。

売却価格 - (取得費 + 譲渡費用) = 譲渡所得(利益)

  • 取得費:その家を買った時の購入代金や仲介手数料など
  • 譲渡費用:今回売るためにかかった仲介手数料や測量費など

ここで問題になるのが、親が何十年も前に買った実家の場合です。「当時の購入価格がわからない(売買契約書が見つからない)」ケースが非常に多いのです。その場合、ルール上、売却価格の「5%」しか取得費として計算することができません。

結果的に「莫大な利益が出た」とみなされてしまい、多額の税金がかかってしまうという厄介な問題が、実家の売却では頻繁に起こります。

特例を使うと、利益から最大3,000万円を差し引ける!

そこで救世主として登場するのが、この「空き家の3,000万円特別控除」です。

この特例を使えば、先ほど計算した「譲渡所得(利益)」から最大3,000万円を差し引くことができます。

たとえば、計算上の利益が2,000万円出たとしても、そこから3,000万円を引けるため、最終的な利益はゼロとなります。
つまり、利益が3,000万円以下であれば、不動産売却にかかる税金が「ゼロ」になるというわけです。
先ほどの「当時の購入価格がわからない」という大ピンチも、この特例を使えれば一気に解決できる可能性があります。

通常の「マイホームの3,000万円控除」との違い

不動産の税金について調べたことがある方は、非常に似た制度で「マイホーム特別控除(居住用財産の3000万円特別控除)」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。
実は、こちらの制度とは完全に別の制度になります。

マイホーム特別控除は、その名の通り「自分が住んでいる家」を売った時に使える特例ですが、今回の相続空き家の特例は「自分は住んでいない(親が住んでいた)空き家」でも使える点が最大のメリットです。

ただ、相続空き家の特例のほうが条件が厳しく、複雑な制度となっています。
マイホーム特別控除との大きな相違点として、以下の4つが挙げられます。

マイホーム特別控除と相続時の3000万円特別控除の相違点

1. 建物の状態に条件がある

旧耐震基準(1981年以前)の建物は、そのまま更地にして売るか、売却前に耐震リフォームをする必要があります(そのままではNGなケースがあります)。

2. 「空き家」であることが前提

相続後に誰かに賃貸に出してしまったり、自分が住んだりすると、この特例が使えなくなります。

3. 被相続人が老人ホーム入居でも適用可(条件あり)

亡くなった親が老人ホームに入っていた場合も、一定条件を満たせば適用できます。これはよく見落とされるポイントです。

4. 適用期限がある(時限立法)

相続空き家特例は、現在2027年12月31日までの時限措置となっています。期限を過ぎると使えなくなる可能性があります。

基本的に、相続空き家の3,000万円特別控除の方が複雑な制度となっていますので、制度を利用する際は「要件」をしっかり確認するようにしましょう。

実家の売却で3000万円特別控除が使えるか確認!「5つの必須条件(要件)」

3000万円特別控除の条件

実家の売却において非常に強力な効果を発揮するこの特例ですが、残念ながら誰でも無条件に使えるわけではありません
税金をゼロにするためには、国が定めた厳しい条件をクリアする必要があります。

以下の5つの条件をすべてクリアする必要がありますので、ご自身の実家が当てはまるかどうか、一つずつチェックしてみましょう。

①「昭和56年(1981年)5月31日以前」に建てられた家であること

まず最初のハードルは、家の「築年数」です。
この特例は「古い危険な空き家を日本から減らしたい」という国の意図があるため、旧耐震基準と呼ばれる古い時期に建てられた家屋(戸建て)であることが条件となります。(※マンションなどの区分所有建物は対象外であり、一戸建てであることが求められます)

②相続の直前まで、亡くなった親(被相続人)が「一人暮らし」をしていたこと

次に、「誰が住んでいたか」という要件です。
死亡する直前まで、親がそこに一人で住んでいたことが条件となります。

もし、あなたや他の親族が親と同居していた場合は、この特例は使えません。

ただし、親が亡くなる直前にはすでに老人ホームに入所しており、家は空き家だったというケースも多いと思います。
その場合でも、要介護認定を受けていたなどの一定の要件を満たせば、特例の適用が認められます。

③相続時から売却時まで、ずっと「空き家」であること

相続が発生してから売却して引き渡すまでの間、その家はずっと「空き家」の状態を保っている必要があります。
誰かに貸して家賃収入を得たり、自分たちが住んだり、事務所などの事業に使ったりしてはいけません。

また、単に「空き家」として維持していても、税務署に「本当に誰も使っていなかったのか(生活の本拠ではなかったか)」を証明できるようにしておくことが大切です。

たとえば、電気・ガス・水道を解約するか、最も低い基本料金にしておき、使用量が著しく少ない記録が残っていると、空き家であったことの客観的な証拠になります。
逆に使用量が多いと、居住や事業利用を疑われることもあるため注意が必要です。

空き家の状態を保てなかった場合、3,000万円の控除が丸ごと使えなくなり、数十万〜数百万円単位で税負担が増える可能性があります。
「貸せばお小遣いになるかも」などと感じても、特例を優先するなら売却まで空き家のまま維持することが鉄則です。
判断に迷う場合は、自己判断せずに税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。

④「耐震リフォームをして売る」か「更地にして売る」こと

古い家は地震に弱いため、次に住む人のために安全を確保するか、いっそのこと家を壊して更地にする必要があります。

以前は「売主(あなた)」が費用を出して耐震リフォームや解体をしてから買主に引き渡さないと、この控除が使えませんでした。
先に数百万円の出費が必要だったため、ハードルが高かったのです。

しかし、2024年の改正により、「買った人(買主)」が翌年の2月15日までに耐震改修や解体をした場合でも、特例が認められるように要件が大きく緩和されました!
これにより、売主の事前の手出し費用ゼロで「現状渡し」で売却しやすくなったため、非常に大きなメリットです。

⑤売却金額が「1億円以下」であること

最後に、いくらで売れたかという金額の要件です。
売却代金が1億円を超える高額な取引の場合は、この特例は使えません。

この特例はもともと、全国に増え続ける空き家問題の解消を目的として作られた制度です。
高額な資産を持つ富裕層への優遇よりも、一般的な相続不動産の流通を促すことが狙いのため、1億円という上限が設けられています。

また、上限額に関して、相続人が複数いる場合は注意が必要です。

たとえば、兄弟3人で実家を相続し、1億2,000万円で売却したとします。
一人あたりの取り分は4,000万円ですが、判定は「一人あたりの金額」ではなく「物件全体の売却価格」で行われます。
そのため、持分に関わらず3人全員が特例を使えなくなってしまいます。

一方、土地と建物を別々に売却するケースや、複数の物件を相続した場合は判定が変わることもあるため、個別の状況に応じて慎重に確認する必要があります。

【要注意】実家売却で3,000万円特別控除を使う際の落とし穴

3000万円特別控除の注意点

「5つの条件を満たしているから一安心!」と思うのはまだ早いです。
特例を無事に適用させるためには、必ず知っておくべき「落とし穴」とも言える注意点があります。

せっかくの無税チャンスを逃さないように、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。

期限は「相続開始から3年を経過する日の属する年」の12月31日まで!

この特例には、明確なタイムリミットが設けられています。
それは「相続の開始があった日(通常は親が亡くなった日)から3年を経過する日の属する年の、12月31日まで」に売却を完了させることです。

例えば、2023年の5月に親が亡くなった場合、3年後の2026年5月になりますので、その年の末日である「2026年の12月31日」までに「売却(引き渡し)」を完了していなければなりません。

不動産の売却は、売りに出してから買主が見つかるまで数ヶ月〜半年以上かかることもザラです。
「まだ時間がある」と思って放置していると、あっという間に期限が来てしまいます。
ギリギリになって焦らないよう、早めの行動開始が極めて重要です。

確定申告が必須!自動的に控除されるわけではない

特例の条件を満たしていて計算上税金がゼロになる場合でも、必ず売却した翌年の2月16日〜3月15日の間に、税務署で「確定申告」を行わなければなりません

役所や税務署が自動的に「あなたは税金ゼロですよ」と計算してくれるわけではありません。
「税金がゼロだから申告しなくていいや」と放置して申告を忘れると、特例が適用されず、後から本来の多額の税金とペナルティ(無申告加算税など)を請求される恐れがありますので絶対に忘れないでください。

相続税の「取得費加算の特例」とは併用できない

もしあなたが、不動産以外の資産も受け継いでおり、すでに「多額の相続税」を支払っている場合は注意が必要です。

相続税を払った人が不動産を売却した場合、「支払った相続税の一部を、不動産の取得費に上乗せして譲渡所得を計算上減らせる」という別の特例(取得費加算の特例)が存在します。

しかし、この二つの特例はどちらか片方しか選べず、併用はできません。

どちらの特例を使えば最終的に手元により多くのお金が残るのかは、売却金額や支払った相続税の額によって変わります。
このシミュレーションは非常に複雑ですので、慎重な計算が必要です。

実家の売却で3000万円特別控除を受けるには?必要な書類と手続き

3000万円特別控除で必要な書類

では、実際にこの特例を受けて税金を安く済ませるためには、具体的にどのような手続きを踏めば良いのでしょうか。
「手続きが難しそうで不安…」と感じるかもしれませんが、全体の流れとそれぞれの目安期間・難易度を把握しておけば落ち着いて対処できます。

基本的な手続きは以下の3ステップです。
役所の審査等の待ち時間があるため、全体を通して1ヶ月〜1.5ヶ月程度の期間を想定しておくと安心です。

1. 必要書類を集める(難易度:★☆☆ / 期間:約1〜2週間)

亡くなった親の戸籍謄本や住民票の除票、実家の売買契約書のコピー、引き渡し時の書類などを手元に用意します。
郵送や役所・法務局の窓口で取得できるものが中心なので、ご自身でも十分に手続きが可能です。

2. 市区町村で確認書をもらう(難易度:★★☆ / 期間:約1〜2週間)

実家があった市区町村(役所)の担当窓口に必要書類を提出し、「被相続人居住用家屋等確認書」という特別な証明書を発行してもらいます。
「確かにあの家は条件を満たす空き家でしたよ」という市役所からのお墨付きをもらうイメージです。
申請してから窓口での審査・発行までに数日〜1週間程度かかる自治体が多いです。

3. 税務署で確定申告をする(難易度:★★★ / 期間:約1日)

売却した翌年2月16日〜3月15日の確定申告の時期に、上記の「被相続人居住用家屋等確認書」や売買契約書の書類一式を添えて、あなたがお住まいの地域を管轄する税務署に申告書を提出します。(※実家があった場所ではありません

もし確定申告書の作成に自信がない、あるいは時間が取れないという場合は、費用はかかりますが税理士にこの作業を「お任せ(代行)」してしまうのが最も確実で安全な方法です。

まとめ:実家の売却は「期限」と「要件」の確認を最優先に!

いかがでしたでしょうか。今回は、相続した実家の売却において税金が大幅に安くなる「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」について解説しました。

【おさらい・重要なポイント】
  • 古い戸建て(昭和56年5月31日以前築)で、親が一人暮らしだった家が対象
  • 相続からずっと空き家であること。老人ホームに入っていた場合も適用の可能性あり
  • 「相続から約3年後の年末まで」という厳密な売却の期限がある
  • 売却金額が1億円以下であること
  • 売った翌年には、税金がゼロになる場合でも必ず確定申告が必要

この特例は、数百万円単位で手元のお金が変わる税制上のメリットが非常に大きい制度です。
しかしその反面、「細かい要件を満たしているかの判断」や「必要書類の準備」が複雑で、専門的な知識が求められます。

「自分の実家が当てはまるのか不安…」「使えるなら売りたいけど、まずは今の実家の価値(査定価格)を知りたい」とお悩みの方は、まずは特例に詳しい不動産会社に相談し、査定・売却のスケジュールを立てることから始めてみましょう。

また、最終的な税金の「どちらが得か」といった計算や判断は、自己判断せずに税理士などの税務の専門家(プロ)へ相談・依頼することを強くおすすめします。

一生に何度もない「大切な実家」の売却。
損をしたり後悔したりすることのないよう、早めに、計画的に進めていきましょう!